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将棋駒『角』の字形について

後のへの参考のため検討資料のみ残しておきます
なお漢字含むリンクはうまく解決できないので直接入力してください

[Res: 28765] Re: ことばの研究室(6) 投稿者:YUTOK 投稿日:2013/08/22(Thu) 11:20
ちょっと前に小6の孫娘に私の将棋の駒や盤などの写真を頼まれて
あげたら学校の課題での研究で

“和のゲーム『将棋』”
〜日本の文化を見直そう〜

という課題に取り組んで12頁の論文(?)を作っていた。

その中で「角行」の駒の説明で『あと、字にも注目 ! ! 』
とあったので訊ねたら「角」の字が「ク」に「用」と
中の棒が付きぬけているとのこと。

恥ずかしながらこのことを私は知らなかった。
ネットでちょっと調べたけれど理由が分かりませんでした。

[Res: 28765] Re: ことばの研究室(6) 投稿者:筒井村重 投稿日:2013/08/22(Thu) 18:21

字統によれば角は、篆文、甲骨文、金文でも下に突き抜けるような字体ではありませんから、
何か由縁がありそうですね。異体字に下にはみだしているようなものがあるかどうか大漢和あたりを
あたれば解るかもしれませんが、なにぶん田舎にいるもので、わざわざ調べに行く気がおきません。
(新字源は汚くなり過ぎて近々買い直すつもりで捨てたので生憎手元にない)

Re: ことばの研究室 (11) 筒井村重 - 2013/10/05(Sat) 01:08 No.30782

角について駅前に出たついでに大漢和で調べてみました。
クに用の角は異体字としても収録されていない。将棋駒においては、誤字が伝統的に使われる書体となっただけと
思われます。特殊な例や、通用する誤字として使われていた可能性までは否定できませんが。
なお角の正字は本来クに肉であったということ。
字源から考えてもクに用という書体が正字であったとは考えにくい。

あと調べるとなると康煕字典くらいになりますが、これは普通の図書館にはおいてないでしょうし、
大漢和で載っていないものが載っている可能性は極めて低いでしょう。

○以下補足
但し中国新字形では、クに用という字体が使われているようではあります。
これは簡体字化の際に標準化されたもので、伝統的な字書に載っていた形ではないようです。
http://zh.wikipedia.org/wiki/角部
http://zh.wikipedia.org/wiki/新字形

ことばの研究室 (12) 投稿者:筒井村重 投稿日:2013/10/06(Sun) 22:43 No.30828
角の件です。

> 蛇足の蛇足 以前書きましたが、一言で言えば学制がはっきりする以前は、一般社会で、
> 多少のことは書家により自由自在だったと申しまする。

一般的に書かれる書体であれば、康煕字典やそれを先行研究として当然使っている大漢和に所載されていない
というのは有り得ない話だと思いますね。清代の考証学者の細やかさというのは信じがたいレベルなんですよ。
僕としては、慣例として認められるほど、流通している「誤字」ではなかったというのがConclusionです。
(※理由は後述してますが、別方面から調べた結果、この結論は撤回します)

大漢和補巻あたりに何か載っているかもしれませんが、これは少なくとも市立図書館にはおいてないようでした。

政治スレの話の方は広がりすぎて、少し面倒なので気が向いたらお返事します。

そういえばトングリさんが英語が達者だった外交官の話が出てきていた時に松岡洋右の名前を挙げてましたが、
グルーの「滞日十年」を手に入れて読んでいたら松岡の英語を非常に誉めている文章がありました。
松岡というと早期退官、満鉄時代の印象が強いのであまり英語力が強いという印象を持っておりませんでした。

Re: ことばの研究室 (12) 筒井村重 - 2013/10/07(Mon) 19:54 No.30851

> 日本の書家がどう実践して居たかということです

日本の書家は基本的に隋唐なども含め、本場中国の書家の臨書をし、気に入った人のスタイルを真似ると
いうところから始めますね。私の説も日本の書家の創作/癖だったという説も書道に詳しい人からみると、
噴飯ものの説でした。正解と思われる内容は後で書きます。


Re: ことばの研究室 (12) 筒井村重 - 2013/10/07(Mon) 21:34 No.30857

昔は本当に政治、宗教、野球の話はタブーとされていたのですよ。今はそれほど熱心な野球ファンが多く
なくなったので、タブーでもなくなりましたが。この掲示板も専らサッカーとゴルフの話ばっかりで、
野球の話はほとんど反応がない。楽天の初優勝は話題にもならなかった。

本題の角の話ですが、まず前提として甲骨文、金文、篆文の形から考えて下に抜けるという形は本来
考えにくいのです。※添付ファイルは字統より抜粋。
中国語wikiでは新字形について、『由象形改從「用」』と解説していますが、ノンセンスです。

例えば有名な康煕字典体でも抜ける形はとっていませんし、篆書体から考えた正字を所載した明末の
正字通でも、角を正字としています。
http://ctext.org/library.pl?if=gb&file=14247&page=26

30857.png(276)

ちなみに字彙補でもそうですね。本来字彙の方を探したかったのですがたまたま見つけたので参考まで。
http://ctext.org/library.pl?if=en&file=13647&page=11


Re: ことばの研究室 (12) 筒井村重 - 2013/10/07(Mon) 21:43 No.30858

ところが『大漢和』を編集している大修館書店にQ&Aなるものがあり、このような記述がありました。
「角川書店の『書道大字典』によれば、隋(ずい)や唐といった王朝のころの石碑では、ほどんどがこの字体で、
 私たちが一般に用いている「角」という字体の方が珍しいくらいです。」

http://www.taishukan.co.jp/kanji/qa02.html#Q0071

正確な字の変遷については大きな図書館にはあると思われる『書道大字典』にあたるのが良いでしょうが、
宋版の写真をネットで見たところ宋代には、少なくとも出版物では、抜けない角が主流だったと思われます。

※角そのものは見つかりませんでしたが、角をつかっている字は抜けていない。
下記4ページの左ページ3行目に解の字があります。
http://www.emuseum.jp/detail/100009/000/000?mode=detail&d_lang=ja&s_lang=ja&class=&title=&c_e=&region=&era=&century=&cptype=&owner=3&pos=9&num=4

隋唐の書家は現代日本でも参考として臨書されることが多いので、この時代の書家の書に多くを学んだ書家は
棒が抜ける角を書くようになり、宋以降の書家の影響を多く受けたか、現代的字形を意識している
書家は抜けない角を書いているのでしょう。

なお、『書道大字典』の記述には大いに興味があるのですが、一番近い所蔵図書館が車で小一時間
かかるようなので、ま、そのうち機会があればという感じですね。


Re: ことばの研究室 (12) 筒井村重 - 2013/10/09(Wed) 00:31 No.30911

字彙も発見できました。こういう書籍が家から写真版で見られるとは、いい時代になったものです。
これは1615年の成立です。なお、ハウスマークの方は直リンクできてます。

http://ctext.org/library.pl?if=en&file=13252&by_title=字彙&page=11

あとこちらは最古の字書とも言える説文解字ですね。ここでは棒は下に抜けていませんが宋代の出版ですし、
本書は楷書の成立前の書籍ですから、楷書で書かれている部分は基本的に宋代の書体を反映したものと
言えましょう。

http://ctext.org/library.pl?if=en&file=77390&page=17

こういう考証は写本などの段階で狂っているということがママあるので難しいのです。

Re: ことばの研究室 (12) 摩訶男 - 2013/10/09(Wed) 08:50 No.30918

めしくったか

(中国では余り聞かず、台湾で普通とか。韓国でサッカー試合に掲げたとか。タイでもよく聞くとか。・・・愚が思い出したのは軍隊で虐めに使った。
「飯食ったか」と訊き、「食ってないから[軍人勅諭を]覚えられないんだ」マタは「食ったのに覚えられないとは何だ」とか続けたという。)

さて今朝は時間が無いので「飯食えず」、朝飯&外出前には書かない予定で居りましたが、興味深いので、念のため早めに書いて置きまする。

筒子>説文解字ですね。ここでは棒は下に抜けていません

下のリンク先(説文解字p17?)の事であるならば、見出語(3行目)とやや大きめの2行目の3字目の2字のみが(現代も正字とされる)角で、
2行目7字目を筆頭に、それ以外の十数字全ては「クに用」ですが?[1]


Re: ことばの研究室 (12) 筒井村重 - 2013/10/09(Wed) 09:44 No.30920

基本的に木版印刷成立までの書籍は写本によるもので、この時点でも活版印刷ではないので、
意識的に校訂していない箇所は底本の記述が残ったものでしょう。
無論彫りを入れるのは版木の職人ですからね。

※北宋刊本ですから印刷技術が端境期であったのと同じように角の字も端境期であったという見方もありえますね
 五代十国のあたりまでは棒抜けが主流だったような気がします。

  • [1]編者注:実際には更に混在している